イラスト

【ポケモン】優れたキャラデザを生み出す方法

ワニ助

このキャラのデザイン、好きだな~

ペン先生

おっ!キャラデザに興味持った?

ワニ助

はい!デザイナーは感覚でキャラクターを作ってるんですか?

ペン先生

いや、実はロジカルに考えた上でデザインされてるんだ。今回はキャラデザについて見てみよう!

鬼才「にしだあつこ」さん

今やポケモンは1,000匹近く存在します。ポケモンのキャラデザは複数人のデザイナーが担当しています。

そんな中でも、とりわけ数多くのポケモンをデザインし、シンプルかつ洗練されたポケモンを生み出す「にしだあつこ」さんというデザイナーをご紹介します。

にしださんはピカチュウを始め、リザードン、マダツボミ、ハクリュー、ブラッキー、ニンフィア、ドレディア、ゾロア、ゾロアーク、マホイップなどをデザインされています。

引用:https://bulbapedia.bulbagarden.net/wiki/User:Altruis/List_of_Pok%C3%A9mon_by_their_designers

どのような考えで、このような良デザのキャラクターを量産されるのかが気になりますよね!中川翔子さんとの対談記事にて、にしださんのキャラクターをデザインする際の考え方が垣間見れるので紹介します。

例えば、フェアリータイプのニンフィアというポケモンを作ってほしいという依頼を受けた際、にしださんは次のように考えてデザインされています。

フェアリーって妖精じゃないですか。妖精っていうと、自分の中ではティンカーベルみたいな、羽根が生えてて人の形をしていて……っていうイメージだったんです。それ以外の表現を考える上で、まずはホンワリとしたカラーをつけようと。しかも「ふしぎないきもの」ですので、現実にはない色にしたいなと思ったんです。

https://funs-project.com/poplab/007/

つまり、下記のような二段階でデザインを考えているのです。

  1. 「フェアリー=妖精」と連想して、妖精で思い浮かべる一般的なイメージ(形状)を想像する。
  2. 「不思議=非現実的」という連想で色を想像する。

次に、描く上で大事にしているポイントは何かという質問に、次のように回答しています。

やっぱりポケモンの場合は「タイプ」があるので、それに寄せているところはありますね。「エスパータイプ」のポケモンだったらエスパー感を伝えるため謎めいた不思議な感じだとか。

https://funs-project.com/poplab/007/

こちらも、下記のように頭の中では二段階に分けて考えているようです。

  1. ポケモンの属性の1つである「タイプ」に着目する。
  2. そのタイプから連想されるイメージを考える。

ここで、見落とされがちですが案外重要だと思われるのが、にしださんの次の回答です。

私自身も、自分がデザインしていないポケモンを描く機会があるんですけど、目の幅の寄せ方とか、ついつい自分のクセが出てしまって。そうすると、そのポケモンじゃなくなっちゃうんですよね。

https://funs-project.com/poplab/007/

つまり、各デザイナーごとにクセが出る目の幅の寄せ方などは、各デザイナーの絵柄であってキャラデザの本質ではないということです。あくまでキャラデザの本質は、上述したような「属性などから連想されるイメージ」ということです。

次に、ポケモンをデザインする上で大切にされていることは何かという質問に、下記のように回答されています。

「出来るだけパーツを少なくする」ということですね。ゴテゴテさせるのではなく、特徴的なパーツを一つだけ加えるようにする。そうすると、塗りつぶした時にもちゃんとシルエットで分かるじゃないですか。そういうことは意識していますね。

https://funs-project.com/poplab/007/

ここで注目すべきは、「特徴的なパーツを一つだけ加える」という文言です。二つでも三つでもなく、一つだけというのが重要なのだと思います。特徴を何個も付け足すのではなく、引き算の美学。たった一つ特徴を加えるとしたら何を加えるかと考えることで、シンプルかつ洗練されたポケモンが誕生するのです。

そして、にしださんは語られてないのですが、特徴的なパーツ・見せたいポイントを一つに絞った後、それをシルエットだけで分かるようにするためには「特徴的なパーツを強調するために敢えてバランスを崩し、個性的なシルエットにする」ことも重要だと考えます。

次に、にしださんのデザイナーとしての原点を探る中川翔子さんからの「ゲーム機の制限があったからこそ、イラスト制作に活かされてることはあるか」という質問に次のように回答しています。

『ドラゴンクエスト』に登場するキャラの「ドット絵」とか素晴らしくて、「あんな絵が描けたらいいな」と思っていました。なのでゲームフリークに入社する前は、ドット絵を描く業務もやっていたんです。(中略)それは絶対にあったと思います。限られた色や線で、どれだけバリエーション豊かなキャラを生み出せるかが勝負なので、ドット絵はその原点というか。

https://funs-project.com/poplab/007/

デザイナーとして重要な「引き算の美学」を骨の髄まで叩き込むために修行したというよりも、色やタッチの制限があるドット絵で如何に特徴あるキャラクターをデザインするかということを徹底的に考え抜いた末に、自然とデザイナーとしての資質が磨かれていったのだと思いました。

鳥山明先生から見るキャラデザの極意

にしだあつこさんの「ドット絵が原点」発言から、ドラクエのキャラデザを担当された鳥山明先生のインタビューを思い出しました。

ドット絵になった自分の絵を見たあと、自分の絵が画面に現れることを考えて、モンスターのデザインをするようになった。

それで、どうせドット絵で見えるんだから、最初からドット絵風に描いたらどうか? と考えて、IIのイラストをドット絵風に描いたことがあったんですよ!

『メイキング・オブ・モンスター 堀井雄二VS鳥山明 対談』『DRAGON QUEST MONSERS』集英社,1996年

なんと鳥山明先生もドット絵からドラクエのキャラクターをデザインされていたのです。

また、遊戯王の高橋和希先生も主人公の武藤遊戯の髪型を特徴的なデザインにした理由に、次のように回答しています。

高橋和希先生

ゲーム化してドット絵になっても、武藤遊戯であると直ぐに認識できるデザインにした。

これは偶然なのでしょうか。単なる偶然だとしても、優れた3人のデザイナーが共通してドット絵を通過しているという事実は、ドット絵という制約のある様式が、デザインというシンプルを正義とする営みにマッチした様式であると言えるのではないでしょうか。白いキャンバスに自由に筆を走らせてデザインを考えるのもいいのですが、敢えてドット絵からデザインを始めることで、シンプルかつ洗練された作品を生み出せることに繋がるかもしれません。